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清水 菁花
京都生まれ。書家。NHKラジオリポーターや講演会などでも活躍。きもの愛好家代表、日本ペンクラブ会員など肩書き多数。現在、東京・赤坂の京都館で書道の指導を通じて京都の文化も伝える。 |
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| 菁花のおやかまっさん |
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| Vol 5. 書家として |
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おち半(ば) 踏む 大原 能(の)里 愛おしく盤(ば)
鹿の声し毛(も) 哀しく あら志(し) |
| (秋深き大原の里を愛おしく想えば、鹿の声を聞いてもちっとも哀しくはない) |
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京都洛北は大原の里にアトリエを構えて早十二年。一番いいことは、自然を肌で感じとれ、良きにつけ悪しきにつけ昔ながらの人間臭さがまだまだ暮らしのなかにあることだ。
和歌のなかで「鹿ぞ鳴く…」とあるが、この地で鹿の声を本当に耳にし、姿を見て、その歌の状況が直にわかった。初めて鳴き声をきいたとき、私はとても悲しく感じ、自然ともの悲しい今様歌を一首詠み、書作した。仮名は平安時代の書風で、漢字は王羲之(おうぎし)風で格調高く。
わが家は三十メートル掘って地下水を引き上げている。越して来たとき、単に水道が引かれていなかったのだ。しかしこの水で摺る墨は細やかな浸透感があり、書に味わいが出る。書作の紙も大原の竹を使って自分で漉いた和紙(大原竹紙)を使う。達成感あふれる心地で書作でき
る。懐かしく思う方へ、良寛調の楷書を混ぜて一首練ると、味わいのある線質がなおかつ、その思いを深く表現し、相手に届けてくれる。
また移りゆく四季の変化を日々感じつつ、書を介して自分を表現できるという喜びを最近、覚え始めた。時には部屋から見える山の緑のなかで、好きな音楽に耳を傾けながら、小春日和のなかでのひとときを過ごす至福さ。なんと幸せなことだろう。
ところが近年のパソコン化により、文字離れ、筆離れが生じてきた。平成の子はラブレターですらメールらしい。ちょっと前なら万年筆時代であり、涙がそのインクの上にポタリとにじみ、相手に想いが深く伝わった。また手紙の行間から読みとれる感情もある。しかしメールのような短い完結文では、誤解すら生じる。まして文章力もなく、書かないことでさらに漢字も忘れるようでは、日本人として恥ずかしい。表意文字である漢字を使うことにより、相手に意が伝わり、またそれを書作することで芸術性が加わり、感情豊かな表現が万能になる。次世代の若い人たちに、この書道芸術・文化をどのように伝えればよいか。大原の里で考えさせられる日々である。
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