トップページ菁花のおやかまっさん
清水 菁花
京都生まれ。書家。NHKラジオリポーターや講演会などでも活躍。きもの愛好家代表、日本ペンクラブ会員など肩書き多数。現在、東京・赤坂の京都館で書道の指導を通じて京都の文化も伝える。
Vol 8.  五十而知天命
Vol 7.  であいに竹紙あり
Vol 6.  月の光に こころ癒されて
Vol 5.  書家として
Vol 4.  京都人のいけず考
Vol 3.  京の口きき
Vol 2.  もっと着物を楽しんで!
Vol 1.  ほんまもんを伝えきれてへん京都
菁花のおやかまっさん
Vol 3. 京の口きき
 「京都は仕事がしにくい」とよくいわれる。
 A氏が、Bさんを知るCさんに、「実はBさんに仕事の依頼をしているのですが、まだ返事がいただけない。考えときますわ、だけで・・・」と嘆く。後日、Bさんから「Cさんとお知り合いやったとか。いやあ、そんなんちっとも知りませんで、失礼しましたなあ」とかなんとかで、交渉は進む。CさんがBさんに「うち(C)は、Aさんを存じてます。しっかりしたお人どすわ」と一言伝えたので、Bさんは信頼感を得て、ビジネス成立は別として、応じてはくれた。こんなケースはままある。A氏とBさんは薄いつながりでも、A氏とBさんの共通知人であるCさんが入ることで、ぐっとA氏とBさんは同格になる。
 A氏は面倒でもまずCさんに、「Bさんにちょっとご紹介いただけませんか」と頭を下げておけば、すんなり事は進んだのだ。これを京都では『口きき』といって、直接、相手のなかへ入らないのが昔から心得として底辺にある。
 難しいのはこの誰と誰がつながっているかの見極め方。京都では人間関係をよく判断するところに頭を使わねば。そのためには、A氏は常日頃から周囲の人と上手に付き合い、ネットワークを築いていくことが、京都でうまく物ごとを展開するコツのひとつといえる。
 これは「一見さんお断り」にも少し似たところがあって、これはけっして「いけず(いじわる)」ではない。それぞれの関係がうまくゆくように聞き合わせをし、お願いすることは信頼があってのこと。 いきなり相手の懐に入るという無粋なことをしない京都人は、口ききなどで、ワンクッションおき、お互いが気遣い、人の輪が広がることをよしとする。
 最近は、パソコンのメール一本で互いに顔を見ずに事が運ぶ時代やけど、少し回り道をしてでも、信頼ある関係性を大切にするのが、京都にはまだ残っている。それが千二百年の歴史あるまちを支えてきたのやと思う。

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